Gallery Den mym ギャラリーデン南山城村 Gallery Den mym ギャラリーデン南山城村

Review

2019.05「現代美術の展覧会 お茶展」

(2019.5.12-5.25 12:00-17:00 ※道の駅は9:00-18:00)  Pastページ>>>>

栗原 祐太


■展示を終えて
今回の展覧会のテーマを聞いた時は、どのように自分の作品と結び付けていくのか非常に悩ましく思い、難しい提示をしてくれたなと思いました。しかしこの地で早くから企画されても良いような直接的なテーマでありつつも、Visual Sensationから引き継いだ平面作品を主にした企画でもあり、またお茶を沸かして飲んで過ごしている時間と、作品を制作したり鑑賞する時間には繋がるものを感じました。 今回は新作を作るとしても南山城の地と直接的な作品にはせず、私の近作のテーマにある「Accumulation=集積」の中から、今回の展覧会へつなげていこうと思いました。 「茶」とりわけ日本茶が醸し出す「渋さ」や「癒し」に対して、作品はどちらかというと味の濃さを意識して、茶の印象や自然に対しているような感じだったと思います。 今回島根から参加させていただいて、辺境から辺境へ赴くような感じもあり、またそういう所もおもしろいと思っていました。私は出品者の中では経験も少なく、在廊中はとても刺激のある時間を過ごすことができ、貴重な機会になったと思います。

塚本 佳紹


■やさしい企て
お茶展「青い家」の亭主塚本は5名の作家の交通整理をしました。作家みなさんのこと、手島美智子さんの平面作品への思いや遊免寛子さんの補助線について振り返りますと、塚本が茶人として南山城の自然と遊ばせていただけたのはみなさんあってのことでしたから感謝しきれません。塚本に何ができたかは分かりませんが、幾つかの言葉の実践を心掛けました。 マルクス墓碑銘に「哲学者たちはこれまで単に世界を解釈しただけに過ぎず、大事なことは世界を変革することである」とあります。 世界を「作品」と読み替えると、観者・批評家・作家は作品を「解釈」しただけで、大事なことは作品を「変革」することだとなります。読み替えに伴いさらに重要なことが見えてきます。そのことに多くの学びがあります。作品の「変革」のために信頼、寛容、手放すこと、知らないということに感謝し畏怖することが肝要だと実感しました。 小さなことです。作品の「変革」のための青い家の変革、むずかしいことでなくただ通路を創ること、観る環境を整えること、さらに、穏やかに「観る」システムを邪魔することで逆に「観る」システムを絶えず再構築させること、それらは生態心理学者ギブソンが提唱した環境が行為を提供するというアフォーダンスの意識であり、視点/線を変えることでした。 視点/線の変革から生まれる不完全なもの、不可解なものに敬意し、お茶展でなせたことを喜びたい。それは岡倉天心が「茶の本」冒頭で述べた茶の奥義でもある「やさしい企て」となり、作家も観者も企画者も批評家も同じ視点に座ることで結べた作品との線、「弱いつながり」です。作品と弱くつながる別の方法をもう一つ持っていてもいいじゃないか。強いられるマネージメント原理主義・管理資本主義経済とは別の方法で作品と弱くつながること。共有すること。やさしい企て。みなさんとともに実践できたことをうれしく思います。

仲摩 洋一


■展示を終えて
自然豊かな南山城村のGallery Denで初めて展示させていただいたのが2014年の個展です。その後、「Visual Sensation vol.6」、「Big Sensation」を経て今回の「お茶展」も参加させて頂くこととなりましたが、これまでの展覧会と異なる点は「お茶」というテーマの存在でした。 南山城村の至る所に点在する茶畑は造形的にも非常に美しく、この地域を特徴づける景色です。日本三大茶の一つである宇治茶もこの地で作られています。 展示についてですが、従来の「本館」・「青い家」と「道の駅」の三か所で作品展示ということで、展示方法や構成について直前まで試行錯誤しながら搬入・展示作業に臨みました。「道の駅」の作品は茶器の絵付けをモチーフにした小品を中心に、「本館」では茶畑をテーマに描いた新作で構成、別館「青い家」は茶席のしつらえを意識した旧作を出展いたしました。特に「青い家」の展示は塚本佳紹さんの斬新な発想と構成力で、普段の個展では実現できないような意外性のある展示空間ができあがったと思います。また各作家の作品が響きあい、心地良い「茶室」となり、この企画展の集大成と位置付けられるものであったと言えましょう。 関係者の皆さまへ、本当にありがとうございました!

藤川 奈苗


■展示を終えて
「テーマは、お茶!」と手島さんから聞いた時は、お茶?!とびっくりしましたが、茶畑広がる自然豊かな里山で、新茶のシーズンにぴったりだなと、何回も通いながら思っていました。本館、青い家、道の駅と異なる展示の仕方で、特に道の駅は、初めての試みでどうなるのかわかりませんでしたが、皆様と作品を一点試しに展示すると一気にそこの空間がかわってみえ、作品のもつ力を改めて感じました。道の駅も青い家も、展示の予想があまりつかないところが、面白く新鮮でした。本館は、里山の自然の延長線上に作品を静かにみることができる空間となりました。 Visual Sensation vol.1に参加してから長い月日が経ちました。今回、以前グループ展でご一緒した方も何人かいて、うれしい再会となりました。3会場、作品を運ぶのにも困難な里山での環境で、作品もコミュニケーションも増え、改めてグループ展の良さを思いました。 また皆様とご一緒、再会できるように、切磋琢磨していきたいと思います。ありがとうございました。

松本 和子


■展示を終えて
わたしはこれまでGallery Denでの展示経験がなく、しかも第一子の出産後半年が過ぎたばかりということもあり、この展覧会はある意味一か八かの挑戦でした。 現代美術のグループ展なのに「お茶展」というインパクトのある展覧会テーマ。 それぞれコンセプトが違う3つの展示会場。 “秘境”と呼ぶのにふさわしい場所にあるギャラリーは、下見に行けば山道に迷いこみ、大変な目に。 そして毎週のように病気を繰り返す我が子。 不安な要素はたくさんありましたが、美しい茶畑がきらめく南山城村という環境と温かく迎えてくれた企画者の方々や作家さん達、そしてついてきてくれた家族のおかげで乗り越えることができたように思います。 これからの作家人生をいきていく為のエールと癒しをありがとうございました。

宮崎 雄樹


■展示を終えて
私は、南山城村での展示はこれで4回目でした。 今回は「お茶」をテーマと決めたことや道の駅で展示をすることで、アートフリークだけでなく、一般の方に観て頂く良い機会になったと思います。 ただ個人的には、もう一つテーマがありました。それは、道の駅に来られるお客様だけでなく、地元の方やそこで働いているスタッフさんに観て頂きたかったことです。 村民の方でギャラリーの存在を知っていても、意外に展示を観て頂く機会を逃されている気が以前からしていました。 村民の方にとって身近な「お茶」と言うキーワードで、距離的・意識的にゆり近くで作品を観ていただく事で、日常にアートを感じて頂けないかと思いました。 今後、このような展示やイベントを定期的に開催出来れば、また新たな動きや意識の変化が起きないかと期待しています。 道の駅のお茶を使ったお土産やスイーツは言うまでもなく美味で、また訪れる楽しみの1つとなりました。 今回の展覧会を無事に開催出来た事、携わって下さった関係者の方々に感謝します。

遊免 寛子


■お茶の記憶
新茶の鮮やかな緑が目に眩しい5月。それは南山城村が最も輝く季節と言える。宇治茶の産地である南山城村でも最も天空に近い高尾にGallery Den mymはある。今回、通常の展示空間に加え、道の駅でも展示することになり、テーマの選定に大いに悩んだ。5月という季節、南山城村をアピールしたいという思い、その多義的な魅力から南山城村の代名詞である「お茶」に決めた。あの時背中を押してくれた当ギャラリー展示作家たちにこの場を借りてお礼申し上げたい。 ギャラリー本館にはお茶の中でも玉露のように厳選されたものとして各作家の新作を、青い家は茶文化の極みであるお茶席に見立て、茶席の亭主として塚本佳紹氏を招き、各作家の過去作を設えていただいた。道の駅は、番茶のように日常の楽しみとして、入手しやすい小品を中心に、特産品が並ぶ販売コーナーや休憩場所に散りばめた。販売コーナーでは、作品が展示されている壁面に目を向ける人は僅かだ。だが、その中でふと作品に目を留め、その瞬間に少しでも心動いた人がいてくださったならと思う。 会期中はわずかな時間しか滞在できなかったが、忘れられない出来事があった。みなさんと青い家で作品を囲みながらゆっくり過ごしていた時、晴れから一転、激しい雷雨となった。不思議にも太陽は雲に遮られることなく輝き続け、滝のように流れる雨を照らした。雨粒の生み出す音はリズミカルな音楽となり茶席を彩った。その瞬間、私はその光景に心奪われた。それは普段の生活では見逃してしまうようなものである。私が美を感じることができたのは、お茶席として設えられた青い家にいたからこそ。人の感覚を刺激し、研ぎ澄ませ、潤す美術の力は、それがどれほど日常的な空間でも、作品がある場に宿るということを確信する出来事だった。それはお茶の力にも似ている。 最後に、貴重な機会を与えてくださった手島さんに、そして共に走り切ってくれた作家の皆さんに心から感謝の意を表したい。私も手島さんのように、この世界に宿る美を捉え形にするアーティストたちを支え励ますことのできる人でありたいと思う。

■本館 展示作品
     

■青い家 展示作品

■道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村 展示作品
   


<OPENING EVENT>

「アーティスト・トーク」

日   時 : 5月12日(日) 13:00〜
              ①12:30~13:00「ランチタイム・トーク」@道の駅
              ②14:00~14:30「アフターランチ・トーク」@本館
              ③15:00~15:30「ティータイム・トーク」@青い家
参加費 : 無料
■オープニングイベント風景


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