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Review

2020.09「きおくの記録」 林 直 展

(2020.9.13-9.26 12:00-17:00)  Pastページ>>>>


林 直



■展示を終えて
まずはコロナ禍のたいへんな時期にも関わらず、たくさんの方々にご来場いただき、 感謝の気持ちでいっぱいです。お話できた方々との会話の中に、 自身の作品についての新たな気づきや、確信を持つことができました。 展覧会のお話をいただいてから、展示の内容について、しばらく考えた期間がありました。 今年は世の中の状況が一挙に大きく変化したため、当初予定したプランを進めるのは、 自分が今一番やりたいこととは少し違う気がして、全く別の内容で挑むことにしました。 撮影を進めたのが、ちょうど外出することも憚られるような雰囲気が続いた時期だったこともあり、 自宅で自らの過去の記憶と向き合うような制作を進めました。 これは一方で以前から取り組んできたテーマでもあり、ものごとの価値観が完全に変わった今だからこそ、 原点を考える意味でも、今撮るべきものだという思いに至ったのです。 写真は人々の記憶を、写された現物以上に蘇らせてくれることがあります。 今回、ギャラリーの持つ歴史に作品を添わせることで、その力をはっきりと確認することができたように思います。 ギャラリーDenさんを包む自然は、普段自分が生活する環境と全く違う感覚を生み出してくれました。 生きていることの本質について考える機会を与えていただき、心より感謝しております。

■林 直 展示作品



2020.09 「人間と空気 human and air(life in the bottom of the blue air)」 葛本 康彰 展

(2020.9.13-9.26 12:00-17:00)  Pastページ>>>>


葛本 康彰



■展示を終えて
春先、新型コロナウイルスを巡る社会の変化で、人並みに気落ちしたり神経質になったりしていました。 メディアを通じて伝えられる感染が拡大していく様子は、僕が作品制作の中で“視よう”としていた、自然の大きな循環のイメージがネガティヴな印象を伴って可視化されてゆくもののように思えました。 気の沈みと、焦燥のような感情がありました。例年であれば春が来て最高気温が上がってゆくのに合わせてその年の制作を始めますが、今年はどうにもそんな気も起こらないまま、ジメジメとした日々を迎えていました。 このままではマズいと梅雨の暮れようとする頃には辛うじて準備に着手しましたが、展示の機会が無ければそのまま沈んだままだったのかも知れません。8月になって現場での制作、設営作業が始まりました。 現地までの移動はなかなかに大変で体力的にきついものでしたが、人との距離に神経を擦り減らす街中の生活からすると、自然に紛れ込んだような“青い家”に身を潜めることは、今日的な緊張状態から心を守ってくれるものだったようにも思います。 そんな環境や機会のお蔭もあって、新作旧作を織り交ぜながら会場で幾つかの制作を試みました。 人の住まなくなった家の持つ人為とも自然ともつかないような懐の深さは、僕のそんな足掻きを掬い上げてくれるようであり、吸い尽くすようでもありました。 そんな調子で制作をして、展覧会をして、会期が終わる頃にはずいぶん季節も変わっていました。 金木犀の匂いを嗅ぎつつ、改めて考えさせられるのはこれまで当たり前のように遣っていた言葉に“しこり”のような、或いは“おもさ”のようなものが生じていることです。 それは例えば何気ない「お越しください」というお誘いのひと言に混じる言い淀みであり、「空気」や「循環」といった作品を語るために用いてきた言葉に同居する薄らとした生々しさです。 それはほんの僅かな綻びのようであり、しかし二度と消えない痕跡のようでもあります ・ だから、“これからの現在”を語るために言葉を更新する必要を感じています。 それは“次のこと”を考えるほんの小さな取っ掛かりに過ぎませんが、自分の中に“つくる”という選択肢があって生まれてくるサイクルに救われているのだなと思います。 最後に、このような状況ながら展示の機会をくださったオーナーの手島さんに感謝します ・ また、現地まで足をお運びいただき、僕が展示をしたということを確認してくださった皆様に感謝します。 社会の様相はまだ進行形の状況ですが、関わった皆様のご無事を祈ってこの文を結びます。

■葛本 康彰 展示作品


<OPENING EVENT>

「出品作家、葛本康彰・林直によるアーティスト・トーク」

日   時 : 9月13日(日) 14:00〜15:15
会   場 : AIR南山城村“青い家”
参加費 : 無料

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